千代女
どち向きて見送る筈ぞ花曇
漱石
花曇り尾上の鐘の響かな
赤彦
昼ふかき櫻ぐもりにするすると青き羽織をぬぎし子らはも
花曇り御八つに食ふは団子哉 漱石
窓に入るは目白の八つか花曇 漱石
里人の堤を焼くや花曇 鬼城
牧水
花ぐもり昼は闌けたれ道芝につゆの残りて飯坂とほし
裏戸でてまた入る杣や花曇 石鼎
薄日着て樹影地にあり花曇 石鼎
物干に布翻へり花曇 石鼎
鈍青の一方に日や花曇 石鼎
花曇り捨てて悔なき古恋や 龍之介
人あゆむ大地の冷えやはなぐもり 蛇笏
還俗の咎なき度や花曇り 蛇笏
軍船は海にしづみて花ぐもり 蛇笏
水低う漕ぎゐる舟や花曇 禅寺洞
闇無の蜑もあそべり花ぐもり 禅寺洞
研ぎ上げし剃刀にほふ花曇 草城
花曇二階に見ゆる九段かな かな女
遠火事の覚束なさや花曇り 龍之介
この頃や戯作三昧花曇り 龍之介
門の花静かに白し花曇 石鼎
天麩羅をあげる仕度や花曇 万太郎
灰神楽あげし掃除や花ぐもり 万太郎
たちぎれになりし線香や花ぐもり 万太郎
ふきあげの音ある庭や花ぐもり 万太郎
屋根屋根の隙ある隅田や花曇 万太郎
海原や江戸の空なる花曇り 龍之介
麦畑の広く明るし花曇 花蓑
馬の耳うごくばかりや花曇り 蛇笏
人下ろして廻す舳や花曇 みどり女
めぐり見て檻猿とぼし花曇 爽雨
泉水に顔をうつすや花曇り 蛇笏
又立ちし鳩の羽音や花曇 茅舎
我に人嵐の如し花曇 石鼎