和歌と俳句

花吹雪

花吹雪狂女の袖に乱れけり 虚子

澄む水にみよしうごきて花吹雪 蛇笏

伏せ籠の雛にかゞみぬ花吹雪 みどり女

渦巻のそちこちに立ち花吹雪 花蓑

花吹雪逃げて丹頂別れ居り 花蓑

水打つてのがれし蜂や花吹雪 花蓑

木の間月掻きくらまして花吹雪 花蓑

坂町の片側塀や花吹雪 泊雲

花吹雪滝つ岩ねのかがやきぬ 茅舎

さやさやと風音すなり花吹雪 淡路女

吹きあがる幕の裾より花ふゞき 櫻坡子

花吹雪く窓をそがひに司書老いたり しづの女

花吹雪金の立札両大師 茅舎

まひまひの舞も了せず花吹雪 茅舎

花吹雪稀に行く人の眼にすさぶ 草城

花吹雪ことしはげしや己が宿 波郷

花吹雪校門吾子を入らしめぬ 鷹女

ひとひらのおくるゝしじま花吹雪 

狷介の顔を窗邊に花ふぶき 蛇笏

花吹雪ふぶきにふぶくゆくへかな 万太郎

花吹雪亡父の洋杖を手に愛す 

起りたる桜吹雪のとどまらず 多佳子

しばらくは花のふぶくにまかせけり 万太郎

花吹雪電工の眉こそばゆし 静塔

およそ来ぬ電車を待つや花吹雪 万太郎

花ふぶきして日みなぎるの波蛇笏

月夜風つのる花吹雪してをらむ 草城

花吹雪磁気みなぎらす変電所 不死男

この庭の今天国や花吹雪 立子

桜吹雪ござ一枚の上に踊る 多佳子

おもかげのまぎるるべしや花吹雪 汀女

その風に山坂も乗る花吹雪 静塔

花吹雪三輪の神鼓を打つなべに 青畝

花吹雪中宮寺さまを吹きとどめ 秋櫻子