和歌と俳句

甘茶

雀子がざくざく浴る甘茶哉 一茶

長の日にかはく間もなし誕生仏 一茶

和尚云ふ甘茶貰ひにまた来たか 虚子

浴佛にただよひうかぶ茶杓かな 蛇笏

お甘茶や一人貌なる疲れ尼 青畝

甘茶仏杓にぎはしくこけたまふ 茅舎

杓の下小さくかなしや甘茶佛 たかし

山寺や花咲く竹に甘茶仏 蛇笏

旅人もまじりてそそぐ甘茶かな 月二郎

寛永寺甘茶の杓の揺れ合へる 素十

桶の中の甘茶減りぬと子が覗く 素十

み仏の産湯かはりてにほひけり 青畝

末法の甘茶を灌ぎたてまつる 草城

地を指せる御手より甘茶おちにけり 草田男

裏山に鶯鳴くや甘茶寺 青邨

罎に入れいたゞいてゆく甘茶かな 青邨

胸広に立たしたまへり甘茶仏 槐太

大空に田がひらめけり甘茶佛 耕衣

甘茶仏虹は海棠より淡く 麦南

掌へ甘茶を甘露の一滴に 草田男

おん見目の滂沱のやまず甘茶仏 爽雨

夕風のゆくてに雨の甘茶寺 双魚

とんとんと土橋を駈けて甘茶貰ひ 林火

丈六の見下し給ふ甘茶佛 林火