神さびて秋さびて上野さびにけり 子規
江戸人は上野をさして春の山 子規
櫻より奧に桃さく上野哉 子規
銭湯で上野の花の噂かな 子規
花の山鐘楼ばかりぞ残りける 子規
寐て聞けば上野は花のさわぎ哉 子規
子規
垣の外に猫の妻呼ぶ夜は更けて上野の森に月朧なり
子規
緑立つ庭の小松の末低み上野の杉に鳶の居る見ゆ
子規
飛ぶ鳥のあすかに行くか時鳥上野の松よ鳴きて過ぎけり
子規
きのふ見し花の上野の若葉陰小旗なびきて氷売るなり
子規
庭もせに昼照草の咲きみちて上野の蝉の聲しきるなり
子規
臥しながら雨戸あけさせ朝日照る上野の森の晴をよろこぶ
子規
朝な夕なガラスの窓によこたはる上野の森は見れど飽かぬかも
銅像に集まる人や花の山 子規
子規
年長く 病みしわたれば 花をこひ 上野に行けば 花なかりけり
松杉や花の上野の後側 子規
髯剃るや上野の鐘の霞む日に 子規
懐炉冷えて上野の闇を戻りけり 子規
利玄
ぐらんとの 手植ぎよくらん 東京の 上野の夏を さびしらに咲く
赤彦
咲き満てる蓮の花の曇り久し上野山より鐘鳴り響く
赤彦
上野山土に霜降れりたまさかのいとま寂しく来りて歩む
赤彦
樹の上に鴉は鳴けり上野山土にあまねく霜ふる時か
赤彦
黒ぐろと幹を交ふる冬枯の木立のなかに鐘鳴りわたる
赤彦
冬の日の照りて明るき黒門の古き弾痕のぞき見て居り
月ぬれて美術の秋を椎がくり 蛇笏
フォトモデル窈窕草青みたり 青邨
夜桜やうらわかき月本郷に 波郷