春寒や砂より出でし松の幹
年々に見古るす家や梅の道
この谷の梅の遅速を独り占む
先人も惜しみし命二日灸
大寺を包みてわめく木の芽かな
菊根分剣気つつみて背丸し
この後の古墳の月日椿かな
この谷の遅日におはす庵主かな
一つ根に離れ浮く葉や春の水
庖厨に草餅あり京に移住の議
山居杉に親しめば連翹野に恋し
杉大樹春の曙に立てりけり
僧一人交りて春の宵集ひ
よき調度枕上なり夜半の春
春の夜を更かし帰りてさす戸かな
柳暮れて人船に乗る別離かな
舟岸につけば柳に星一つ
花暮れて夜のもとゐとなりにけり
濡縁にいづくとも無き落花かな
提灯に落花の風の見ゆるかな
春風や闘志いだきて丘に立つ
山吹に深山の雲のかかるなり
山吹や人に怖ぢざる渓の魚