和歌と俳句

柳暮れて人船に乗る別離かな 虚子

舟岸につけば柳に星一つ 虚子

縄暖簾くぐりて出れば柳哉 漱石

見上ぐれば坂の上なる柳かな 漱石

家形船着く桟橋の柳哉 漱石

艪波すぐ吹き消す風の柳かな 橙黄子

江光に舟人立てる柳かな 橙黄子

お神輿の荒れて過ぎたる柳かな 石鼎

神輿荒れもみにもみたる柳かな 石鼎

霽れ際の風が出てきし柳かな 風生

わか柳一すぢのりて藁庇 青畝

抛られし纜うけし柳かな 泊雲

池の面にはらりとしたる柳かな 蛇笏

春泥の乾きそめたる柳かな 風生

卒然と風湧き出でし柳かな たかし

糸柳障子灯りて見えにけり 風生

下市に上市つゞく柳かな 喜舟

大慈悲や柳が下の迷子石 喜舟

大仏の開眼かすむ柳かな 喜舟

灯るまで雀かしまし門柳 源義

きえぎえに白山みゆる柳かな 万太郎

柳萌え温室の花より淡かりき 蛇笏

水くねり流るる邑や柳かげ 虚子

一様に岸辺の柳吹き靡き 虚子

ひとりゐにたへぬやなぎのひかりざま 林火

ゆつくりと時計のうてる柳かな 万太郎

やせんぼの柳あわてて伸びそめし 青畝

何もかもいまはむかしのやなぎかな 万太郎