門跡の屋根拝まるゝ霞かな
手拭に包める髪や霞む旅
泣顔のくしやくしや誰や涅槃像
山寺の松のみどりの涅槃かな
涅槃会や大雄宝殿開放つ
道場の樹下石上の百千鳥
膝折といふ名所の雲雀かな
すさまじや曠野の雨を揚雲雀
数の帆は赤貝とりや揚雲雀
入海を船の出入りの燕かな
柳屋の紅買ひに入る燕かな
花の道葛城の神おはしけり
山里や花の盛りの轆轤ひき
初花や乳の祈願の観世音
言立ては蝦蟇の膏や花盛り
沈丁や百夜通ひに匂ひける
沈丁やまらうどに銅鑼叩かする
草の戸や身上見する葱坊主