俳句案内

西東三鬼

十一
十二
十三
十四
十五
十六

聖燭祭工人ヨセフ我が愛す

燭寒し屍にすがる聖母の図

聖燭祭妊まぬ夫人をとめさび

咳きて神父女人のごと優し

聖燭祭娶らぬ教師老いにける

あきかぜの草よりひく く白き塔

貝殻のみちなり黒き寡婦にあふ

ほそき靴貝殻をふむ音あゆむ

砂白く寡婦のパラソル小さけれ

聖き夜のなかぞらに魚玻璃に

東方の聖き星凍て魚ひかる

聖き魚ははなびらさむき卓に生く

円光もみじろがね魚ねむる

聖き書外よりも黒く魚と在り

小脳をひやし小さき魚をみる

水枕ガバリと寒い海がある

不眠症魚は遠い海にゐる

長病みの足の方向海さぶき

吹雪昏れ白き実弾射撃昏れ

砲音をかぞふ氷片舌に溶き

松林の卓おむれつとわがひとり

黒馬に映るけしきの海が鳴る

微熱ありきのふの猫と沖をみる

肺おもたしばうばうとしてただに海

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