和歌と俳句

西東三鬼

クリスマス馬小屋ありて馬が住む

クリスマス藷一片を夜食とす

猫が鶏殺すを除夜の月照らす

蝋涙の冷えゆく除夜の闇に寝る

切らざりし二十の爪と除夜眠る

老婆来て赤子を覗く寒の暮

木枯の真下に赤子眼を見張る

誰も見る焚火火柱直立つを

北風に重たき雄牛一歩一歩

北風に牛角を低くして進む

静臥せり木枯に追ひすがりつつ

木枯過ぎ日暮れの赤き木となれり

燈火なき寒の夜顔を動かさず

寒の闇ほめくや赤子泣く度に

朝若し馬の鼻息二本白し

寒の地に太き鶏鳴林立す

電柱の上下寒し工夫登る

寒の夕焼架線工夫に翼なし

電工が独り罵る寒の空

酔ひてぐらぐら枯野の道を父帰る

汽車全く雪原に入り人黙る

焼原の横飛ぶ雪の中に病む

マスク洩る愛の言葉の白き息

巨大なる蜂の巣割られ晦日午後

友搗きし異形のが腹中へ