和歌と俳句

西東三鬼

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

夏涸れの河へ機関車湯を垂らす

病院の奥へ氷塊引きずり込む

男の顔なり炎天の遠き窓

働くや根のみの虹を地の上に

の声の糸引く声が鉄壁へ

の航一尾の魚も現れず

月明の船中透る母呼ぶ声

真白海渡りきて子規拝む

ふるさとの草田男向うへ急ぐ

岩山に風ぶつかれり歯でむく

秋の雨直下はるかの海濡らす

夜光虫の水尾へ若者乙女の唄

飛行音に硝子よごるる北の風

青年は井戸で水飲む百舌鳥叫ぶ

枯野の日職場出できし顔にさす

枯野の縁に熱きうどんを吹き啜る

蜘蛛の糸の黄金消えし冬の暮

草枯るる真夜中何を呼ぶ犬ぞ