和歌と俳句

炎天

炎天悲報同じく瞳黒き戦禍の民 草田男

炎天をすすみがたなの昼の月 草田男

炎天の三重より奈良へ歩き出す 誓子

炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり 鷹女

炎天に名所写真師半平和 草田男

湖の今紺青に炎天下 虚子

前後なきかなしみ炎天の太鼓の音 草田男

肉親の肉なき骨や炎天下 草田男

のがれ得ぬ一事や瞭然炎天下 草田男

私葬了りぬ正午のサイレン炎天へ 草田男

炎天奔流何に留意のひまもなく 草田男

炎天に声なき叫び下駄割れて 三鬼

炎天に繋がれて金の牛となる 鷹女

炎天や濡れて横切るどぶ鼠 三鬼

炎天歩む吾は「残留の歌声」ぞ 草田男

炎天の遠きものほど眼遣る 誓子

炎天や笑ひしこゑのすぐになし 多佳子

埴輪出土炎天に歓喜のこゑ短く 多佳子

炎天や地に立命のわれと影 蛇笏

眼を張りて炎天いゆく心の喪 三鬼

針金となり炎天のみみず死す 三鬼

炎天に充ち満つ法華太鼓の孤 三鬼

炎天の暗き小家に琴の唄 三鬼

山荘のテラス暫く炎天下 虚子

炎天の筏はかなし隅田川 波郷

あはあはと富士容あり炎天下 風生

炎天に手を腰汽車の来るを待つ 誓子

炎天の「考える人」火の熱さ 三鬼

炎天に怒りおさへてまた老うも 林火

炎天に清流熱き湯なれども 誓子

炎天の噴湯を見れば太初なり 誓子

炎天に函嶺の紺滞る 青畝

炎天の機械も何かつかさどる 汀女

炎天に昼月無用の光り加へ 林火

炎天に古鏡かくれて光りけり 静塔

炎天の下に蟲鳴き恐山 立子

炎天に匂はんばかり山上湖 林火

黙々と列につきゆく炎天下 立子<

炎天や真のいかりを力とし 楸邨