千万年後の恋人へダリヤ剪る
天地のあひびき長し月見草
月見草はらりと宇宙にうらがへる
敗北を負ひ一望の夏草に
向日葵の大輪切つてきのふなし
大樹あり若葉してあり信頼す
虹消えて了へば還る人妻に
麦秋の蝶になぐさめられてゐる
四面楚歌香水左右の耳朶に
蛍火や語らひ合ふといへど僧
老いづまの泳ぐに水着かなしめり
炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり
向日葵の一茎がくと陽に離る
今年竹切りしがかぐや姫も出ず
袷著て照る日はかなし曇る日も
老境や四葩を映す水の底
セル軽く俳諧われを老いしめし
死ぬること独りは淋し行々子
葭切や未来永劫ここは沼
五十あとさき南風の坂道視るものなく
南風の孔雀となりて死に挑む
夏の星我が齢までは数へられる
あめつちの静かなる日も蟻急ぐ
蟻を瞳にひとり途方に昏れてゐる
老ゆるべし虹の片はし爪先に