いちじゆくの実の七月を占はれ
いちじゆくの実青しいのち死にがたし
向日葵に見られ働けりひたすらに
鍬とればあはれ草木の蒼き夏
茄子苗を植うる一心これの手に
昼月と身を麦秋のかぜにさらし
麦嵐夜はうつし身を横たへぬ
麦嵐吹けり痩身耐へてゐる
夕焼けて水辺の松はありしかな
こころ死を欲れり夕焼松の根に
夕やけの野空をゆくはうのとりか
ゆふやけの野のさみしさよ眼をつむり
向日葵を咲かせ心に兵がある
亡びゆく国あり大き向日葵咲き
向日葵黄に一碗の水を尊み住めり
夏痩せて瞳に塹壕をゑがき得ざる
子と父と日の夏原に肩を並べ
子の鼻梁焦げて夏野の日を跳べり
夏野原征くべき吾子を日に放ち
夏日射す召され征く日のなき夫か
饒舌の父子よ夏日野を灼くに
吾がわらひ夏原の日にひびき消ゆ
書よめば卯月は黄なりあやめ草
金星は笑めりまひまひは水に倦み