和歌と俳句

向日葵 ひまわり

向日葵のまむきそむきや亭午さがり 野風呂

向日葵の蓋を見るとき海消えし 不器男

向日葵のまなこ瞠れる園生かな 誓子

向日葵やいはれ古りたる時計台 風生

向日葵や日ざかりの機械休ませてある 山頭火

向日葵に昼餉の煙ながれけり 麦南

日を追はぬ大向日葵となりにけり しづの女

ひまはりのたかだか咲ける憎きかな 万太郎

たまたまの日も向日葵の失へる 汀女

向日葵の天よりも地の夕焼くる 誓子

雲焼けて向日葵のみを昏くせる 誓子

青空に飽きて向日葵垂れにけり 鳳作

向日葵の垂れしうなじは祈るかに 鳳作

向日葵に海女のゆききの夕さりぬ 鳳作

向日葵の空かがやけり波の群 秋櫻子

向日葵に馳せくる波の礁を超ゆ 秋櫻子

向日葵にたぎちて帰る波の列 秋櫻子

向日葵にとほき紺青の波の列 秋櫻子

向日葵に天よりあつき光来る 多佳子

向日葵は火照りはげしく昏てれゐる 多佳子

向日葵に雲壘々とかさなれる 彷徨子

向日葵をつよく彩る色は黒 杞陽

キリストに向日葵あげて巷の中 青邨

キリストに挿せし向日葵のみ新た 青邨

二重窓小窓をもてり向日葵黄 青邨

向日葵の眼は洞然と西方に 茅舎

向日葵や戦場よりの文一行 草田男

向日葵の初々しくて若々し 杞陽

向日葵や黄といふ色は脳に染む 杞陽

向日葵や花の脳天剥けにけり 杞陽

倒れたる夜の向日葵酔眼に 波郷

向日葵に見られ働けりひたすらに 鷹女

高原の向日葵の影われらの影 三鬼

向日葵に澄む即興の子を守る唄 草田男