和歌と俳句

日除け 日覆

今日の日も衰へあほつ日除かな 虚子

日除して百日紅を隠しけり 鬼城

月空に在りて日蔽を外しけり 虚子

日蔽の繪様やものの半なる 虚子

川向ひ皆日蔽せし温泉宿かな 虚子

眼のあたり怒涛相うつ日覆かな 石鼎

簀日除を人馬潜らせ茶店かな 石鼎

東海の日に朝からの日除かな 喜舟

三日月にたたむ日除のほてりかな 水巴

満潮の海の中なる日除かな 虚子

兵溢れて日除の店の二軒かな 橙黄子

島を遠く細々と日除柱かな 橙黄子

日覆に松の落葉の生れけり 虚子

日除して青田に沈む小家かな 普羅

舵取りて傾く舟の日覆かな 虚子

日蔽やキネマの衛鬱然と 誓子

清瀧の橋の上まで日蔽かな 虚子

旅の路日覆の書肆にはひりけり 爽雨

日蔽下少しの風も無かりけり 虚子

大旅館終に日除をかけにけり 石鼎

クリーニングのアイロン見ゆる日覆かな 石鼎

日覆より午後三点の鐘なれり 誓子

艫に張る一枚日覆艫をかくす 誓子

日車の影は日覆にまぎれなく 悌二郎

舳の日覆艫の日覆と向きかはる 誓子

夜の日覆涼しき風のひそみける 楸邨

おもひでの町のだんだら日除かな 万太郎

蔽ひ押す葉の透き見ゆる日覆かな 石鼎

白木綿の日蔽つる時日の暑し 石鼎

舟ゆるる昼餉の日覆かかぐべく 悌二郎

船発ちて白き日覆に煤降らす 波津女

船ゆきて日覆も波の上ゆけり 波津女

釣堀の日蔽の下の潮青し 虚子

浜街道日除に浪のひびく日あり 林火

港通り日覆はやめつつ海青し 林火

日覆に針のやうなる洩れ日かな たかし

日覆や湯槽の潮未だ沸かず 波郷

日覆に少女は水を滝なさしめ 波郷

壇浦見渡す日覆まかせけり 久女

日覆かげまぶしき潮の流れおり 久女

だんだらの日覆見をれば海あるごとし 

窓あまた幌の日覆またあまた 

昼ひなか遊べる家の日覆かな 占魚

みづうみへけしき競へる日除かな 万太郎

俘虜貨車の日覆はためき迅走す 静塔

大部屋の智慧をしぼりて日除かな 朱鳥

吊り下げし仮の日除の蓆かな 虚子

浅間背に日覆したる家並び 虚子

だんだらの日覆くだもの赤青黄 林火

日蔽が出来て暗さと静かさと 虚子

大空に突き上げゆがむ日蔽かな 虚子

日の二時の木のかげやどす日除かな 万太郎

煉瓦館日除真紅に老給仕 汀女

棕櫚縄の垂涼しげに日除出来 立子