和歌と俳句

村上鬼城

風呂敷に包んで持てり夏羽織

老が身に短く着たり夏羽織

白頭を大事にかけよ夏帽子

かりそめに京にある日や虎が雨

白百合の花大きさや八重葎

海の上にくつがへりけり雲の峰

わら家根や南瓜咲いて雲の峯

北山の封ぜよ御坊達

雷の落ちてけぶりぬ草の中

北山の遠雷や湯あみ時

夕立や池に竜住む水柱

扇絵やありともなくて銀の波

君来ねば柱にかけし団扇かな

日除して百日紅を隠しけり

船中に日陰を作る日傘かな

石段に根笹はえけり夏の山

夏山や鍋釜つけて湯治馬

涼しさや白衣見えすく紫衣の僧

涼しさや犬の寐に来る蔵のかげ

鳴かねども河鹿涼しき座右かな

打水や塀にひろがる雲の峯

夏夕蝮を売つて通りけり

麦飯に何も申さじ夏の月