和歌と俳句

村上鬼城

まひまひや影ありありと水の底

まひまひや深く澄みたる石二つ

浮草や蜘蛛渡りゐて水平ら

蓮の葉や波定まりて二三枚

田草取田の口とめて去にけり

馬に乗つて河童遊ぶや夏の川

鵜飼の火川底見えて淋しけれ

船ばたに竝んで兄鵜弟鵜かな

お地蔵や屋根しておはす青芒

草の戸や二本さしたる蝿たたき

蚊柱や吹きおろされてまたあがる

を打つて大きな音をさせにけり

高く吊つて蚊帳新しき折目かな

蚊帳の中に親いまは亡し月あがる

ほぞぼそと白き煙や蚊遣香

蚊いぶしに浅間颪の名残かな

水郷や家くぐらする蚊を焼く火

蝙蝠や飼はれてちちと鳴きにけり

山寺や蝙蝠出づる縁の下

蝙蝠や三十六坊飯の鐘

蝙蝠や並んで打てる投網打ち

蝙蝠や飼はれて育つ烏鼠の間

青桐の落花に乾すや寺の傘