五月雨のふり潰したる藁家かな
五月雨や松笠燃して草の宿
五月雨や浮き上りたる船住居
出水や牛引出づる真暗闇
提灯に風吹き入りぬ五月闇
苔さくや親にわかれて二十年
蛞蝓の歩いて庭の曇かな
さいかちの落花に遊ぶ蟇
蟇夕の色にまぎれけり
蟇のゐて蚊を吸い寄する虚空かな
桑の實や二つ三つ食ひて甘かつし
道端の義家桜実となりぬ
青梅の葉蔭に見ゆるほどになんぬ
水の邊や恩鍬はづして田植馬
小さき子に曳かれていばゆ田植馬
さみしさや音なく起つて行く蛍
蛍来よ来よ魂も呼んで来よ
親鳥の高浪に飛ぶ浮巣かな
鳰の巣の見え隠れする浪間かな
夕焼やうぐひ飛出る水五寸
水泡を跳り越えけり水馬
相逐うて流れをのぼる水馬
月浮いてまひまひ遊ぶ野川かな