和歌と俳句

後藤夜半

宵もはや枕はづせし寶舟

傀儡をつかへる影も夕かげり

追羽子の町に出てゐる杜氏かな

寶恵駕をおくりて軒の立咄

寶恵駕の髷がつくりと下り立ちぬ

傀儡の厨子王安寿ものがたり

あまりたる輪飾かくるところがな

わが宿の姉いもうとの子の音

橙をそののち如何したりけん

こぼれたるかるたの歌の見えしかな

賽ころのやうやくに来し絵雙六

ころげいづ賽のほとりにいつもあり

傀儡に掻い口説かれて見てゐたり

降りやみし薄雪惜み初詣

はつ春の細き筧をみちびける

良寛の遊びしといふ手鞠見る

筆の穂の長いのが好き福寿草

松の内相見ゆこと美しく

母がりの屠蘇の美ましとうけ重ね

頼もしき二十七顆の福寿草

舞初の女大名太郎冠者

初夢の扇ひろげしところまで

杖をとりまゐらす女禮者かな

かりそめの世とは思はじ古稀の春

繭玉の揺るるあしたもあさつても

寒一と日初天神といふ日あり