和歌と俳句

種田山頭火

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明治44年

夏の蝶勤行の瞼やや重き

流藻に夢ゆららなり夏の蝶

吾妹子の肌なまめかしなつの蝶

貧に処す炉開や森の落葉樹

饒舌の悔もあり闇の河豚汁

月のぼりぬ夏草々の香を放つ

サイダーの泡立ちて消ゆ夏の月

月に浮ぶや浴衣模様の濃き薄き

朝露や畔豆刈れば小虫とぶ

草の実や落し水田に日の赤き

梨もいづ卓布に瓦斯の青映えて

友にきくセメント岩や枯芒

明治45年

毒ありて活く生命にや河豚汁

病む児守る徒然を遠き凧も見て

月今宵青き女よ梨剥がむ

湯上を長廊下踏む彼方寒月

壁書さらに「黙」の字せまり松の内