和歌と俳句

落花

石塔や一本桜散りかかる 子規

人もなし花散る雨の館船 子規

めらめらと落花燃けり大篝 子規

故郷の目に見えてただ桜散る 子規

牧水
はらはらに 桜みだれて 散り散れり 見ゐつつ何の おもひ湧かぬ日

荒れ馬にとりすがりたる落花かな 虚子

花散るやかがみのなかの障子口 万太郎

落花掃き居れば友来し垣根かな 淡路女

濡縁にいづくとも無き落花かな 虚子

提灯に落花の風の見ゆるかな 虚子

吹きよせて落花の淵となりにけり 鬼城

花散つてきのふに遠き静心 鬼城

花ちりて地にとどきたる響かな 鬼城

花ちりて春敲御門祭静かなり 鬼城

呼べど返らず落花に肥ゆる土の色 鬼城

闇の空よりちらちらと花散り来たり 亞浪

酔へば物皆なつかし街の落花踏む 山頭火

磯山のさびしき花も散りにけり 石鼎

木漏れ日のつめたきにたまる落花あり 山頭火

落花相寄るたまゆらの風ほのか 亜浪

干傘のひつくりかへる落花かな みどり女