和歌と俳句

朧夜

朧夜や誰か寝て行鹿島舟 白雄

朧夜にくづれかゝるや浪かしら 子規

朧夜の銭湯匂ふ小村哉 子規

朧の夜五右衛門風呂にうなる客 漱石

怒濤岩を噛む我を神かと朧の夜 虚子

朧夜や一力を出る小提灯 虚子

朧夜や東上りに都の灯 虚子

朧夜や裏町にある小料理屋 虚子

朧夜や本所の火事も噂ぎり 蛇笏

朧夜や人にも逢はず木の間征く 草城

千樫
おぼろ夜の 村の長みち 嫁入の むれにまじりて わが歩みゆく

朧夜の塔のほとりに影法師 茅舎

朧夜や伊達にともしぬ小提灯 虚子

思ひあまたいくさする身のおぼろ夜は 素逝

おぼろ夜のいくさのあとのしかばねよ 素逝

おぼろ夜のはふり火に立つわれ隊長 素逝

おぼろ夜の頬をひきつらせ泣かじ男 素逝

朧夜の山に山火の首飾 たかし

おぼろ夜の妻よ古りつついや愛し 草城

朧夜の船の傾きかすかなる たかし

おぼろ夜の孝行塚の由来かな 万太郎

おぼろ夜のブルースはかなげに術なげに 草城

おぼろ夜や籠提灯の一つづつ 万太郎

おぼろ夜のめぐる因果や浪花節 万太郎

朧夜の我を出でゆく何ならむ 楸邨

朧夜の鈴のおもろのきこえをり 楸邨

おぼろ夜のさだまる灯影母の窓汀女

おぼろ夜の鬼ともなれずやぶれ壺 楸邨

おぼろ夜の鈴か我かが鳴りにけり 楸邨

おぼろ夜のおぼろに見えて探しもの 楸邨

おぼろ夜のきりりと鳴りし馬の顎 楸邨