声出さば崩れ去るべき秋の顔
柘榴見つつ胸中おしあひへしあひぬ
妻にゐて我にはをらぬみそさざい
炭馬の首をふらねば霧ばかり
汽車とまろ檜の皮を剥ぐ匂ひ
鷲が見てその嘴も見るごとし
白魚の目が見しものを思ひをり
蝶舞へり乗りてたのしき口車
朧夜の鈴のおもろのきこえをり
目ほそめて蒲公英の見れば見ゆ
無為無我のいやはてに鯖青かりき
青虫のひたゆくは言持たぬため
産む山椒魚雲の山嶺寂寞と
産む山椒魚透きとほる水の底を掻き
産み了へし零山椒魚足うごく
雪解餓鬼田に子を産みその子も山椒魚
離雨離雨と森青蛙ゆめならず
朴の葉にそそがねば梅雨見えぬなり
合歓咲いてD51老いぬ羽越線
わが科や谷谷見ゆる青あらし
白咲くと暗き火見ゆる白牡丹
蝉持つ子笑顔をしまひ忘れたり
遠景にて濤たちあがるほととぎす
雪谿やいつ来て妻に真白の蛾
はしる蟻とまるやふくれくるごとし