和歌と俳句

加藤楸邨

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声出さば崩れ去るべき秋の顔

柘榴見つつ胸中おしあひへしあひぬ

妻にゐて我にはをらぬみそさざい

炭馬の首をふらねば霧ばかり

汽車とまろ檜の皮を剥ぐ匂ひ

鷲が見てその嘴も見るごとし

白魚の目が見しものを思ひをり

舞へり乗りてたのしき口車

朧夜の鈴のおもろのきこえをり

目ほそめて蒲公英の見れば見ゆ

無為無我のいやはてに鯖青かりき

青虫のひたゆくは言持たぬため

産む山椒魚雲の山嶺寂寞と

産む山椒魚透きとほる水の底を掻き

産み了へし零山椒魚足うごく

雪解餓鬼田に子を産みその子も山椒魚

離雨離雨と森青蛙ゆめならず

朴の葉にそそがねば梅雨見えぬなり

合歓咲いてD51老いぬ羽越線

わが科や谷谷見ゆる青あらし

白咲くと暗き火見ゆる白牡丹

持つ子笑顔をしまひ忘れたり

遠景にて濤たちあがるほととぎす

雪谿やいつ来て妻に真白の

はしる蟻とまるやふくれくるごとし