さえざえと雪後の天の怒濤かな
白魚に旅ゆく朝の明けはなれ
あけぼのや欅を春の露はしり
榛の芽や吹きとぶ濤は濤の上
谿ふかく篁あふつ霙かな
岩の秀の十基の墓の春没日
霙うつ夜見の砂丘の汽笛かな
春寒く甲板の鉄鎖ひきずらる
春暁の啼くとき鴎やめば雪
春暁の水脈二岐れ明けきたる
崖の上に犬吠えたつる雪曇
雪の湾幾千の海月ながれたり
春愁やくらりと海月くつがへる
春さむく海女にもの問ふ渚かな
赭き崖の滴るごとし春没日
わが肩や雲より赫と春日の手
笹鳴やほとほと燃ゆる火山岩
春日没る始終の巌かな
春さむき顔も巌のひとつかな
巌・濤どこか笹鳴してゐたり
春怒濤ずんずん暗き巌かな
暗に湧き木の芽に終る怒濤光
春寒のぶつかりあへる海月かな
牧の牛濡れて春星満つるかな