別れ霜踏んで征でたつ人ありき
船の火の赤灘わたる木の芽かな
春暁の大山に濤はみな向けり
父の忌の母と立ち見る野の枯木
新雪や崖の上下に声めざめ
転校の子に泣かれゐる雪の中
新雪の人の表札を見てはゆく
子が寝ねて妻の水のむ雪明り
妻は我を我は枯木を見つつ暮れぬ
子が来ねば妻を呼びなど春灯下
いからねば一日はながし寒雀
砂踏むや蹠崩るる寒三日月
みつむればものひかりいづ雪曇
茶が冷えて目に遠くなる大火鉢
四五本の枯木を過ぎて女なり
蜥蜴出て一日崖の滴れり
妻うたふ梅雨夕焼の厨より
根切虫月に雨ふりゐたりけり
うしろより忽然と日や梅雨あがる
苺くふや眼鏡こはれし雨の街
初燕父子に友の来てゐる日