初夢のなくて紅とくおよびかな
なゐ止んで繭玉いろを競ひけり
羽子板の裏絵さびしや竹に月
臥てきけばさびしきものよお万歳
舞ひ終へて金色さむし獅子頭
初刷を買ふあたらしき財布かな
繭玉のさくら色より明けにけり
真白さのつくばねうけよ初御空
初空の下なる蕪畠かな
初風呂を出しくれなゐの襦袢かな
初風呂の熱きに雪を掬ひけり
足袋底のうすき汚れや松の内
羽子板のつきくぼめたる裏絵かな
羽子板の裏絵消ぬべくなりにけり
松飾るすめらみくにの民なれば
常ならぬ世にありこれの松飾る
松飾り一億のこころ今ぞあらた
松飾しんしん青し兵に書く
焼け凍てて摘むべき草もあらざりき
初湯出て青年母の鏡台に
初空に父在りと思ふ一礼す
初髪を小さく母に白髪無く
路地裏もあはれ満月去年今年