夕月やあぎと連ねて鯉幟
一むらのおいらん草に夕涼み
桜桃のみのれる国をまだ知らず
梅雨冷えや一りん赤き花ざくろ
鈴蘭の香はしけやしかをり傘
人妻は髪に珊瑚や黄雀風
夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり
秋近き風鈴となりねむられぬ
吾が好きは犬と牡丹よ水を打つ
卯月来ぬましろき紙に書くことば
卯月来ぬあしたあさてを寝ておもふ
卯月来ぬ自分に飽きてゐる自分
おいらん草に情熱もゆるかなしかり
今宵蛾に触りてしこめと吾がなりし
蛾が白くしこめは梳けり夜の髪を
蛾のひげの垂れて来てわれを嗤ふかな
風吹くと鹿の子の瞳ものをいふ
顔よせて鹿の子ほのかにあたたかし
世に倦めり鹿の子に倦めり泣きたかり
ひるがほに電流かよひゐはせぬか
昼顔や人間のにほひ充つる世に
羽蟻飛び立ちぬ平和な朝がいま
光りつつ羽蟻は穹にちらばれり
芥子散ればおもき頭蓋がわれにある
芥子散つて細菌髪の毛をねらふ