和歌と俳句

春の日

春の日のくれなんとして豆にえぬ 犀星

日も春の浅間根つづる桃櫻 亜浪

竹の風ひねもすさわぐ春日かな 犀星

春の日のくれなんとして豆にえぬ 犀星

巣鴉や春日に出ては翔ちもどり 不器男

弔辞読む眼に春日影おとろふる 月二郎

弥陀の道てらてらうすき春日かな 月二郎

暮れそめて暮れをはらざる春日かな 草城

戯るゝ猫に甲板の春日影 かな女

茂吉
春の日はきらひわたりてみよしのの吉野の山はふかぶかと見ゆ

茂吉
春の日は午を過ぎつつみよしのの山の杉生は陰をつくりぬ

春の日はササの葉なりに藪に降る 草田男

焼跡のここが真中の春日差 草田男

雲の端の照りて春日ををらしむる 誓子

足もとへ斜めに窓の春日射 草城

漆黒の卓上電話春陽に 草城

春日を鉄骨のなかに見て帰る 誓子

春の日の晩照のなかになほ勤む 誓子

春の日の松風もなき真砂かな 草城

光背と没る春の日と燻れる 誓子

春の日の降りそそぎゐる藪黄なり たかし

深川の濁れる春の日は酸つば 茅舎

美しき春日こぼるる手をかざし 汀女

空いよよ蒼く春の日いよよ濃し たかし

杉むらのうす闇の青き春日かな 草城

わが影をひき春陽の階を降る 草城

楼門より寄生木高し春日の中 欣一

わが肩や雲より赫と春日の手 楸邨

弱けれど春日ざしなり夢殿に 綾子

八一
うちあふぐのきのくまわのさしひぢきまそほはだらにはるびさしたり

八一
ふるみやのをかべにたてばいくとせのはるびさしたりそのくさのねに

白足袋に春日まぶしや階のぞく 知世子

落花生むくや春日の白きこと 知世子

笹むらや葉一枚づつ春日濃し 占魚

白雲の妬心にかくす春日かな 普羅

一人づつすれちがひゆく春日かな 万太郎

春の日のやうやう暮るるあはれさよ 草城

水平線春日の馬の四股に澄む 林火

日をつつむ雲いで来し春日かな 万太郎

春の日やポストのペンキ地まで塗る 誓子

春の日や加茂川に逢う桂川 草城

豆咲いて室戸の春日焼くごとく たかし

殉教図春日燦と射せば見えず 青邨

母に逢ふごとく春日に甘えをり 風生

病者の手窓より出でて春日受く 三鬼

春日照る街道筋に落着けず 誓子

われとわが影とたたずむ春日かな 万太郎

母性ネットリ春日むさぼる緋のペンキ 草田男

春の日やボタン一つのかけちがへ 万太郎

春の日やおのずの身のこなし 万太郎

誰おもひ出しても春日てのひらに 双魚