和歌と俳句

日野草城

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花ざくら爛漫として人飢うる

うぐひすのこゑのほがらにひと飢うる

旦よりひもじくて草芳しき

ひもじくておとなしき子や落椿

落椿子のひもじきは堪ふべしや

餓鬼となるわが末おもふ夕霞

永き日を妻と暮らしつ子は措きて

春の夜の浴室かぐはし妻のあと

妻も飲むあまくつめたき春の酒

おぼろ夜の妻よ古りつついや愛し

一片の妻と欠き合うチョコレエト

春はあけぼの妻の寝顔をまなかひに

浪華より子等来たり妻母となる

リラの香のありと思ひつつころぶしぬ

にほふリラひとのみじろぎにもにほふ

米櫃に米尽きて春立ちにけり

春の雪妻はひもじさをふと言ひけり

春の雨ひびけりいつの寝覚にも

春水やよき妻獲たる古男

手に貰ひ紅梅の枝のたのしさよ

春の日や加茂川に逢う桂川

紅梅の八重咲きつくす瑠璃天に

紅梅を仰ぎてひさし他の門

板の塀古りてしづけし春の草

あたたかき試歩をとどむる雪柳

ゆく春や朝空照りてシユウベルト