和歌と俳句

日野草城

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杉むらのうす闇の青き春日かな

バス待つと居ればゆふづく山ざくら

くたぶれて夕やまざくら白かりき

父母の老きづきおどろく花日和

くらし高照る春の夕雲に

夕妻と鬱金ざくらはあをあをと

白藤の花蔭にふむその落花

立ちつくし白藤の香はありにけり

花つつじあやにくぐもり鳴くは蟇

春陰の階を金堂へわがのぼる

わが影をひき春陽の階を降る

わがひとりさまよへば一つ紅椿

菖蒲生ふ大和の国のみづたまり

風つのりしだれ葉ざくらは吹き立てられ

老いぬ春のしぐれのきらりとす

深くひとりわが居りくれぐれに

ゆふぞらにはなびら反らし紫木蓮

春潮の霞みつつあり汽車の音

青む芝少年少女影と馳す

枕べにことしの春は立ちにけり

ぽんかんのあまあまと春立ちにけり

ふと疼く注射のあとや冴え返る

友ら逝きわが生きのびて冴え返る

文旦の皮もこもこと春寒き

破れたる国のはじめをおもんみる

きさらぎの初うぐひすを朝耳に

うぐひすの初音のひびく障子かな