和歌と俳句

木蓮

白木蓮があざやかな夕空 山頭火

もくらんの濃く静かなる夜明かな 石鼎

木蘭はむらさき籬はみどりかな 石鼎

はくれんの散るべく風にさからへる 汀女

白木蓮の花今日ひらく苞の落つ 汀女

引越して来て木蓮咲いた 山頭火

木蓮やほこり上げ来る風の中 万太郎

木蓮や西風強き日のつづきけり 万太郎

襟あしのごとし薄闇の木蓮は 草城

木蓮と大きな門の記憶のみ 風生

木蓮に白磁の如き日あるのみ しづの女

はくれむの翳をかさねて日に対ぬ 亜浪

木蓮の地にちかきはしらみそむ 鴻村

木蓮に杉の梢の皆禿 茅舎

木蓮や蒼天蒼天夜にはあらず 茅舎

木蓮の花間を落ちて来たる雨 たかし

木蓮に風雨の声の昏くなる 亜浪

木蓮に瓦は銀の波を寄せ 茅舎

うつつつと雨のはくれむ瓣をとづ 亜浪

はくれむのひたすら白く夜にありぬ 亜浪

木蓮や手紙無精のすこやかに 波郷

非時の雪はくれむすでに錆ふかき 亜浪

木蓮や急須めでたき白磁なる 秋櫻子

木蓮や熊野路に入る一つ星 欣一

白蓮の隈どりのごと月のかげ 占魚

木蓮を折りかつぎ来る山がへり 虚子

木蓮のみえて隣のとほきかな 万太郎

ゆふぞらにはなびら反らし紫木蓮 草城

はくれむや起ち居のかろき朝来り 亞浪

木蓮を花舗に見かけて歩み来し 誓子

木蓮の咲くあかつきのまぶたかな 綾子

白れむやあしたの霜を語り過ぐ 亞浪

白れむに夕日の金の滴れり 亞浪

木蓮の白光薫ず池のうへ 秋櫻子

風の木蓮足頸太き吾妻佇つ 欣一

木蓮の一枝を折ぬあとは散るとも 多佳子

木蓮の一片を身の内に持つ 綾子

遠ちに僧形木蓮ぐぐと花開く 鷹女

暁の病室白木蓮の舞出でむとす 波郷