和歌と俳句

竹下しづの女

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郵便の疎さにも馴る雲雀飼ふ

籠雲雀に街衢の伏屋の明け暮るる

ことごとく夫の遺筆や種子袋

水飯に晩餐ひそと母子かな

貧厨にドカと位す冷蔵庫

墓参路や帯まであがる露しぶき

掃苔や景行帝の御所ちかく

真額に由布嶽青し苔を掃く

ひよどりきくいただき来人来ずも

忌ごもりのしのび普請に秋老ける

香の名をみゆきとぞいふ冬籠

日々にふくらみやまず書庫の窓

書庫の窓つぎつぎにあくさくらかな

母の名を保護者に負ひて卒業

いまそかるみ霊の父に卒業

かたくなに枝垂れぬ柳道真忌

貫之の歌たからかに菜摘人

玄海に花屑魚育てて碧き潮

卓の貝深海の譜をひそと秘む

書庫暗し若葉の窓のまぶしさに

紋のなき夏羽織被て書庫を守る

司書わかし昼寝を欲りし書を閲す

かわせみに蔦をよそはぬ老樹なく

月見草に子におくるるの母帰宅

月見草に食卓就りて母未だし