寒風やたかくは飛ばぬ土の鳥 禅寺洞
寒風に葱ぬく我に絃歌やめ 久女
寒風や菜に飛ぶ虫の散りぢりに 水巴
明日の網をつくらうてゐる寒い風 山頭火
寒い風の広告人形がよろめく 山頭火
うまい手品も寒い寒い風 山頭火
競つて売られる大魚小魚寒い風 山頭火
寒風と雀と昏るるおのがじし しづの女
寒風のつよければ振る旗おもし 素逝
青空に寒風おのれはためけり 草田男
煉瓦塀ただ寒風の想夫恋 草田男
寒風に未来を問ふな臍に聞け 草田男
寒風に吹きしぼらるゝ思ひかな 立子
寒風を来し目に少し涙ため 立子
寒風のぶつかりあひて海に出づ 誓子
寒風に牛叱るこゑのみ短か 信子
対岸の人と寒風もてつながる 三鬼
寒き風吹けばきりりと面あげ 立子
寒風吹く何か面白き事無きやと 耕衣
縋るものなし寒風に取り縋る 鷹女
孤児肘を挙げぬ返しの寒風に 草田男
寒風に孤児なに物もなきところ 草田男
寒風の砂丘今日見る今日のかたち 誓子
寒風を突いて人皆用ありげ 立子
寒風にま向き歩きて泪拭く 立子
切通し多羅尾寒風押し通る 誓子
さむかぜに衝立の句碑無季を書く 静塔