和歌と俳句

星野立子

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時雨るるや話し残せしこと文に

旅師走君意地はれば悲しけれ

待たされてゐて気が楽や大火鉢

わが寝ぬる枕屏風のただましろ

騒がしき娘たちやな日向ぼこ

火桶に手思ひ出せなきことばかり

酷寒の我に家あり衾あり

送らるる節分の夜のよき車

冬日没す庭愕然と木木立てり

夷ぎれ買ふも旅なれ人ごみに

大佛に足場かけたり小六月

初冬の徐徐と来木木に人に町に

木枯や月いただきて人急ぐ

午後五時の町の雑踏冬霞

太る夜夜の風ぐせかくれ棲む

寒き風吹けばきりりと面あげ

冬ばらや父に愛され子に愛され

便り待つ切や十一月となる

火の起りゆくさま鉄の円火鉢

年の瀬のネオン山本山高島屋

買物はたのしいそがし日短

冬の月より放たれし星一つ

笹鳴の突ともう起きねばならぬ

枯菊に鏡の如く土掃かれ