冬晴や入るを許さぬ道返す
人々の心にあまえ冬籠
吹き晴れし大つごもりの空の紺
わが膝に今冬日さし句帖乗り
人声を誰ときゝ分け日向ぼこ
冬晴や旅に迎へし誕生日
雪吊を見に誘はれて下駄借りて
日落つればがたと寒しや山の寺
顔見世といへばなつかし吉右衛門
鎌倉の谷戸の冬日を恋ひ歩く
北風にまむき歩きて目に泪
三方に障子ある部屋避寒宿
冬の日のいつも我追ひ我包み
今落ちし枯葉や水にそり返り
大根の土出し肩に日当れる
著ぶくれて顎埋め読み耽りをり
紅葉掃く白砂の上を草帚
風花の雪に変りて夕べ来し
夕烏啼くやいよいよ雪しげし
寒に入る日の新聞をひろひよみ
寒梅や空の青さにすきとほり
寒梅やあまりに遠き枝のさき
いつもする独りの賭や日脚伸ぶ