日向ぼつこ日向がいやになりにけり 万太郎
わかものの恋きいてやる日向ぼこ 草城
ちかよりて老婦親しく日向ぼこ 蛇笏
書簡うくことのためらひ日向ぼこ 蛇笏
帰郷者の如く橋辺に日なたぼこ 草田男
いづこにも衰老のゐて日向ぼこ 誓子
つかのまのきづなをたちてひなたぼこ 蛇笏
老顔の倦むをしらざるひなたぼこ 蛇笏
騒がしき娘たちやな日向ぼこ 立子
藪の気を吸ひつつ背は日向ぼこ 草田男
伝へ聞く友の栄華や日向ぼこ 草城
書をあけて活字とびちり日向ぼこ 爽雨
みつめたる日は燃えゆがみ日向ぼこ 爽雨
母の店へ来る客仰ぎ日向ぼこ 草田男
眼つむれば駈けりゐる血や日向ぼこ たかし
ともしき血溶けて流るる日向ぼこ たかし
けふの日の燃え極まりし日向ぼこ たかし
撫で下す顔の荒れゐる日向ぼこ たかし
島裏のさびしさ告ぐよ日向ぼこ 汀女
日向ぼこしてにこにこと待たれゐし 立子
日向ぼこ蜜柑山にて糖化して 誓子
日向ぼこ光の中に永くゐし 誓子
胸もとを鏡のごとく日向ぼこ 林火
人声を誰ときゝ分け日向ぼこ 立子
欠伸して顔の軋みし日向ぼこ 誓子
子とありて燃えつるる耳日向ぼこ 爽雨
遊ぶことばかり考へ日向ぼこ 立子
お茶の間のテレビがきこえ日向ぼこ 立子
くるめきは日にわれにあり日向ぼこ 爽雨
日向ぼこ佛掌の上にゐる思ひ 林火
日向ぼこ神の集ひも日向ならむ 林火
あをぞらは融通無碍よ日向ぼこ 林火
障子あけて業平像と日向ぼこ 林火
日向ぼこ温しといへば母に似む 汀女
据ゑられし石のごとくに日向ぼこ 林火