冬耕の田のま中より打ちはじむ
書をあけて活字とびちり日向ぼこ
みつめたる日は燃えゆがみ日向ぼこ
茶の花のたまたま大に仰向きに
悴みて繰れば画譜みな花ひらく
悴みてただポケットに陥る手
煮えふるふものに箸のべ薬喰
息白く別れ促すごとくなり
うべなひし息のまどかに白かりし
裏富士の夕べ傾き鴨の湖
近づくと見えし湖鴨昃り去る
はこびくる薪に雪つみ炉べ更くる
山荘の榾こそ尽きね壁炉もゆ
ことごとく炉火金色と思ふとき
火の山の夜明り見んと炉べをたつ
雲凍てて噴煙打つにまかせたり
湯殿には椎茸づくり冬ごもり
絵の売れし画室のさびれ笹子鳴く
咳つづく窓の月はもくつがへり
書見器に画集燃えもし風邪籠り
風邪こもる部屋のガス炉の花の如
いづくにか在りたる冬至南瓜切る
あつる刃に冬至南瓜の古朱映ゆる
疎けれど炭のお歳暮怠らず