和歌と俳句

皆吉爽雨

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立冬の塵穴菊を捨てそめし

うち返す手をめづらしみ初火桶

短日の午より月の濃かりけり

一字消すきのふの一句日短か

ぶどう棚及びて眠る尾根まどか

従ふにぶどう広棚山眠る

大幹に添うて冬日のうち震え

落葉ふるひまを雪蟲たちゆらぎ

刈らでおく萩のいよいよ微塵なり

山荘の落葉火柱なして燃ゆ

土もまた順ふ落葉掃きすすむ

落葉ふむ音はうしろへ残るもの

牡丹枯れ梅枯れかかり庭小春

あまた出て小春を崩す雲ならず

蕎麦刈はしぐさやさしく野の小春

くれなゐに蕎麦を刈り伏せ野の小春

マスクして何をかおのがつぶやきし

マスクしてへだてしものに月星も

貝のみな時雨をためし磯ゆくも

花に火をちりばめ菊の焚かれけり

一匂ひしたる後ただ菊焚かれ

袖口へひそみつづける胼と見ゆ

霜除の木々うかがひて息吹あり

子芭蕉にして霜除の大たぶさ

霜除の芭蕉つれだつのみの庭