立冬の塵穴菊を捨てそめし
うち返す手をめづらしみ初火桶
短日の午より月の濃かりけり
一字消すきのふの一句日短か
ぶどう棚及びて眠る尾根まどか
従ふにぶどう広棚山眠る
大幹に添うて冬日のうち震え
落葉ふるひまを雪蟲たちゆらぎ
刈らでおく萩のいよいよ微塵なり
山荘の落葉火柱なして燃ゆ
土もまた順ふ落葉掃きすすむ
落葉ふむ音はうしろへ残るもの
牡丹枯れ梅枯れかかり庭小春
あまた出て小春を崩す雲ならず
蕎麦刈はしぐさやさしく野の小春
くれなゐに蕎麦を刈り伏せ野の小春
マスクして何をかおのがつぶやきし
マスクしてへだてしものに月星も
貝のみな時雨をためし磯ゆくも
花に火をちりばめ菊の焚かれけり
一匂ひしたる後ただ菊焚かれ
袖口へひそみつづける胼と見ゆ
霜除の木々うかがひて息吹あり
子芭蕉にして霜除の大たぶさ
霜除の芭蕉つれだつのみの庭