入学式の幕ふくれきて頬にふるゝ
桜餅のんでしまへば笑ふにおそし
日永ひねもす籾殻流る岸辺かな
草餅や廂にのれる風暖簾
めぐり見て檻猿とぼし花曇
野焼火のおしのぼりゆく堤かな
佇める人にひろごる野焼かな
留守の戸の鍵を袂や花衣
花篝なびいて長き焔かな
汐干潟望んでかくる襷かな
めぐり見てさきがけ椿二つかな
落椿踏まれし蕋のふるへをり
東風吹くや金剛山の片かすみ
軒宿り出てのる電車春の雨
水にうく日輪めぐり蘆の角
春潮に揺れつゝつゞく小魚かな
桃の花活くるうすべり敷きにけり
挿しこみし中の青枝や桃の花
蝶々やかゞまり話す間より
山吹や風はたゞ葉を小だたみに
かへり見て飽かず椿の大樹かな
枝々の盛り移りや老椿
いみじくも見ゆる雲雀よ小手のうち
ひとり来て句会支度や寺遅日
夜使や木瓜の盛りの植木市