皆吉爽雨
東風にとぶ池の蒲の穂吾にも来よ
庭木々の名も受験子のそらんぜよ
わが書架の書もうばひ去り受験の子
卒業のバテレン恋ひの島へ旅
卒業の旅のオランダ橋にいま
漆黒にとどく入学服と帽と
病後なる食後ころぶし花夕べ
初蝶の光りとのみに庭を過ぐ
春惜しむ蕗にかがみて茎撓む
梅白し菰着し松の尽くるところ
伊豆にして雹うつ車窓実朝忌
はや焼きし避寒の伊豆の山片面
春立つと来つつ水仙畑みだれ
体重計東風吹く病衣捨てて乗る
浄身にめざむる病後朝の東風
病愁のほかは春愁われになし
芽柳をあふいでつひに縺れなし
身をのぼるあうらの応へ青き踏む