冠着の寒風遊ぶ子を転す
鴉下る枯れ千枚のどの田目指す
雪嶺を天の高みに田の昼餉
ねんねこの赤きに泰き児日は午なり
わが死後のごと一燈に妻子凍む
十九のわれ風邪鼻せせる師に見えし
稲架の棒すぐ雪囲ひ棒雲幾重
ここ市振冬濤に汽車声あげ過ぐ
皆晩年冬日黄なるに撮られたり
雪に谺して馬をまた嘶かす
アカゲラも来て雪晴の直ぐなる樹
火を焚きて眼を燃やしゐる冬木樵
冬に入る挽屑の香の中に鋸
転がり配る林檎一と跳ねしてとどく
冬眠の土中の蟲につながり寝る
落葉存分浴びきたりし夜肉を煮る
光の輪運ぶごとくに麦蒔くひと
鱒棲まはせ神の泉の冬を涸れず
冬耕人くちびるに血を滲ませぬ
胸もとを鏡のごとく日向ぼこ
冬麗や赤ん坊の舌乳まみれ
戻る鵜に寒暮むらさきより黒へ
寒禽に枝のぬらさき緊りけり
雪被れば篠もおそろし青こもらす
子のたつる茶に正客よ雪の夜は