霜きびし父子起きいでて湯を沸かす
隙間風祖母と寝し子の寝落ちしか
父と子の生活忽忙と木枯れたり
夕日寒吾子の手ぬくく掌にあれど
冬の鵙道白むまでくもらせぬ
寒落暉沼へかよへるほそき径
雪明りベッドにうづむ寝顔かな
膝さむく鳴らし夕刊をとりに立つ
枯葉落つ妻在らぬ燈をともすとき
押黙る鴨と刻経しわれに気付く
歩道までさす枯蓮のひかりを過ぐ
枯蓮の傷みけぶらふ水の上
鴨下りぬ枯れふす蓮の暗き奥処
咳すれば書架の背文字のみなまたたく
息さへや風邪の高熱こもりにほふ
雪明り熱のぼるとき冴えにけり
風邪の師の温言胸にたたみ聴く
冬日消え師の口髯も昃りけり
髯のびて息白くからむ病み給へり
オーバーのまま風邪の子の熱うかがふ
昃る沼吸はるるごとく下りくる鴨
羽ばたき翔ち水したたらす鴨のあり
中天に鴨のこゑあり日眩しき
機械光る冬日窓よりことごとく
藍濃ゆく冬の海光歯車に