凍みる国鯉こくの味濃かりけり
糸を煮る雪夜紅糸作るべく
耳掘ればがらんどうなる冬夜かな
大晦日は昔も今もさむき夜ぞ
浪音にまぎれざるもの夕笹子
岬鼻は冬鵜の棲処日が落つる
藁焼く火墓を照らして冬が来る
逆立てる冬木や達磨市となる
味噌の話あれこれ枯木宿の夜や
楮釜笛が守役夕凍み来
冬の暮戻りて知りし通夜にゆく
晩年や籠りて雪の日もまじり
鳥よぎる冬木はあれどとまらずに
お七夜荒れ汐のしぶきの夜の橋
お七夜荒れ太梁が守る倉二階
お七夜荒れ明けて日のさす七ツ島
霰打つ谷底の墓時忠卿
濤寒しうたひておらは雇人だ
廃塩田しぐれに海の色戻す
冬籠る挨拶のごとひとに告げ
まれびとの態の蘇民に雪つけり
猟銃音山重なるを知らすなり
寒椿けふもの書けて命延ぶ
埋火をひろぐさながら夜寒星
酔泣きのひとりをかこみしぐるる夜
帰り着くごとくに冬を籠るかな