和歌と俳句
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

凍みる国鯉こくの味濃かりけり

糸を煮る雪夜紅糸作るべく

耳掘ればがらんどうなる冬夜かな

大晦日は昔も今もさむき夜ぞ

浪音にまぎれざるもの夕笹子

岬鼻は冬鵜の棲処日が落つる

藁焼く火墓を照らして冬が来る

逆立てる冬木や達磨市となる

味噌の話あれこれ枯木宿の夜や

楮釜笛が守役夕凍み来

冬の暮戻りて知りし通夜にゆく

晩年や籠りて雪の日もまじり

鳥よぎる冬木はあれどとまらずに

お七夜荒れ汐のしぶきの夜の橋

お七夜荒れ太梁が守る倉二階

お七夜荒れ明けて日のさす七ツ島

打つ谷底の墓時忠卿

濤寒しうたひておらは雇人だ

廃塩田しぐれに海の色戻す

冬籠る挨拶のごとひとに告げ

まれびとの態の蘇民に雪つけり

猟銃音山重なるを知らすなり

寒椿けふもの書けて命延ぶ

埋火をひろぐさながら夜寒星

酔泣きのひとりをかこみしぐるる夜

帰り着くごとくに冬を籠るかな