竪にする古きまくらや寒椿 野坡
折り取つて日向に赤し寒椿 水巴
つるべ棹影さす藪や寒椿 石鼎
瀞の岩重なり映り寒椿 石鼎
縁下りし鶏に日はなし寒椿 石鼎
楠の葉にさらさら雪や寒椿 石鼎
垂れし枝反り上り咲く寒椿 花蓑
寒椿高山木と活けにけり 石鼎
寒椿尿瓶を愛づるあろじかな 茅舎
下むきに咲きそる花や寒椿 立子
寒椿まつたき花も五つほど 悌二郎
掃きとりて箕に二三輪寒椿 石鼎
寒椿小さく赤き一重なる 石鼎
寒椿線香の鞘はしりける 茅舎
寒椿少しく紅を吐きにけり 青邨
汐入りの池あたたかし寒椿 汀女
寒椿つひに一日の懐手 波郷
寒椿落ちたるほかに塵もなし 悌二郎
寒椿日輪まこと揩スくて 茅舎
獄を出て手触ると欠けし寒椿 不死男
寒椿朝の乙女等かたまりて 欣一
靴底のあたたまりをり寒椿 楸邨
くれなゐのまつたき花の寒椿 草城
寒椿咲きたることの終りけり 風生
寒椿怠らざりし日も昏るる 波郷
逗留や二輪久しき寒椿 風生
寒椿月の照る夜は葉に隠る 貞
何といふ赤さ小ささ寒椿 立子
ことごとに人待つ心寒椿 汀女
寒椿けふもの書けて命延ぶ 林火
摩崖仏見醒めしにけり寒椿 静塔