和歌と俳句

川端茅舎

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

雪の上どつさり雪の落ちにけり

霜ばしら選佛場をかこみけり

霜柱ひつこぬけたる長さかな

霜柱そだちし石のほとりかな

の中に灯りぬ閻魔堂

寒月の通天わたるひとりかな

寒月や見渡すかぎり甃

鐘楼や城の如くに冬の山

氷る夜や抱きしめたる菩提心

氷る夜の文殊に燭をたてまつる

達磨忌や僧を眺めて俳諧師

病僧やかさりこそりと年用意

欄間より小夜風通ふ蒲団かな

ちびちびの絵筆また捨て日向ぼこ

笹鳴や呪文となへて子守沙弥

いちはやき旭は輪蔵に寒雀

銀杏散る童男童女ひざまづき

寒椿線香の鞘はしりける

枯薊心頭の花燃えにけり

うちなびき音こそなけれ枯芒

たらたらと日が真赤ぞよ大根引

生馬の身を大根でうづめけり

大根馬菩薩面して眼になみだ

絃歌わく二階の欄も干大根

大根引身を柔らかに伸ばしけり