雪の上どつさり雪の落ちにけり
霜ばしら選佛場をかこみけり
霜柱ひつこぬけたる長さかな
霜柱そだちし石のほとりかな
凩の中に灯りぬ閻魔堂
寒月の通天わたるひとりかな
寒月や見渡すかぎり甃
鐘楼や城の如くに冬の山
氷る夜や抱きしめたる菩提心
氷る夜の文殊に燭をたてまつる
達磨忌や僧を眺めて俳諧師
病僧やかさりこそりと年用意
欄間より小夜風通ふ蒲団かな
ちびちびの絵筆また捨て日向ぼこ
笹鳴や呪文となへて子守沙弥
いちはやき旭は輪蔵に寒雀
銀杏散る童男童女ひざまづき
寒椿線香の鞘はしりける
枯薊心頭の花燃えにけり
うちなびき音こそなけれ枯芒
たらたらと日が真赤ぞよ大根引
生馬の身を大根でうづめけり
大根馬菩薩面して眼になみだ
絃歌わく二階の欄も干大根
大根引身を柔らかに伸ばしけり