川端茅舎
雪山の底に方等般若落つ
雪山の谺金輪際を這ふ
耿々と氷るきりぎしいく重ね
雪山の遠目に煙る林かな
雪山の金色の線引くところ
巌頭や兎の如き雪一握
熊笹の雪刎ねてバス駆け上る
この冬を黙さず華厳水豊か
紺青のつらら打ち落つ華厳かな
瑠璃光の瑠璃よりあをきつららかな
滝壺へ雪蹴つてわれ足駄がけ
滝壺のつらら八寒地獄之図
斧冴えて立木を作仏したまへり
斧は冴え立木はこれの観世音
雪の中膏の如き泉かな
雪の中金剛水を汲む乙女
神橋の下寒の水あをかつし
凧一つ上りて今朝の含満ケ淵
雪山の麓のポスト尊くて
眠る山廟の極彩打守り
眠る山陽明門をひらきけり
冬山の廟の極彩ものいはず