霜光り泰山木の葉に流れ
枯芭蕉三本の影相寄らず
寒の土紫檀の如く拓きけり
枯芒脚下に樅の梢かな
月光に深雪の創のかくれなし
月天へ雪一すぢや松の幹
雪の原犬沈没し躍り出づ
しぐるゝや竃の中の不動尊
大銀杏颪しやまざる焚火かな
暦売南無観音の扉かげ
洲に並ぶ千鳥に白帆矢のごとし
十五夜の寒月梅の南谷
寒月に光琳笹の皆羽撃つ
紫の立子帰れば笹子啼く
散紅葉交へて離々と初氷
鵯谺高杉の穂を逆落し
鵯や紅玉紫玉食みこぼし
霜柱崖は毛細根を垂り
紫の氷かなしや虎落笛
時雨来と背の鉄兜撫で別れ
薔薇色の空に鐘なる氷かな
梵妻もまじりて時雨火燵かな
烈風にぼんやり灯る枯木宿
捨てし身や焚火にかざす裏表