朝霜や青菜つみ出す三河嶋 子規
南天をこぼさぬ霜の静かさよ 子規
霜の蟹や玉壺の酒の底濁り 子規
朝霜に青き物なき小庭哉 子規
霜の朝袂時計のとまりけり 漱石
左千夫
山の手は 初霜置くと 聞きしより 十日を経たり 今朝の朝霜
左千夫
塵塚の 燃ゆる煙の 目に立ちて 寒しこのごろ 朝々の霜
角鳴て闘ふ牛や今朝の霜 碧梧桐
積藁の枯木の霜に雀かな 碧梧桐
道の霜拾へるを近江聖人へ 碧梧桐
赤彦
やせ松の 松かさたたく 小鳥らの 嘴寒からん この朝の霜に
赤彦
朝照る 日のうすら霜 ひえびえと 蓼の丹茎に とけて沁むかな
霜いたし日々の勤めの老仲間 鬼城
霜降れば霜を楯とす法の城 虚子
鹿下りつ橋と定りぬ今朝の霜 石鼎
霜掃きし舟に朝日や城の下 石鼎
うらうらと旭いづる霜の林かな 蛇笏
烏啼く時舌赤く見ぬ棟の霜 泊雲
痛み侘びて信心もなし霜の声 かな女
舟べりの霜しづかなる水面かな< 蛇笏
まぶしさや朝日おろがむ霜の上 石鼎
利玄
道ばたの 枯かや草に おく霜の 旭をはじき 光るきらきら
松の霜をけぶらせ沈む雀かな 石鼎
うす霜やほのぼのとして微雨の中 石鼎
月の枝光るところを霜としぬ 石鼎
屑々に蝶の翅や霜の石 泊雲
霜の声眉にかぶさる山もなし 亞浪
寒菊の茎にまことや今朝の霜 石鼎
畑井戸や霜拭きそごく釣瓶竿 泊雲
あしび早花ごしらへや朝の霜 泊雲
茂吉
道芝の 霜をいたしと 思ほえて 光あたらぬ ところ歩みつ
茂吉
霜ふれる 野のほそ川に 青々と 藻のふらぐさへ かなしきものを
茂吉
みすずかる 信濃のくにの 高遠に 一夜ねむりて 霜をあはれむ
今朝の霜濃し先生として行く 放哉
つよ霜に神々達の姿かな 石鼎