山茶花や先づ舂ける陶土見る
山茶花や授戒会名残斎に来て
妻難を文す寒さや君にのみ
模様彫罠木にも見ゆ冬山家
絶えて紀行なき蕪村思ふ眠る山
道の霜拾へるを近江聖人へ
かくて住みし応挙ぞと知る寺冬木
学校の冬木に雉の棲める朝
地に下りし鳶に引かるゝ枯野かな
凩や白樺の魔火さそふ森
冬薔薇月山鍛冶の下りて居り
嘴鍬を土に鴉の冬日かな
雲を叱る神あらん冬日夕磨ぎに
冬日落つまこと梢の鴉島
陣の跡地を走る風の落葉かな
隧道の飯場石焚く雪籠り
寒月や雪束の間の罠獲物
望む松凍てつく星や鴨の鳴く
藪の音と月明り蒲団展ぶる時
蒲団干す屋根に懐の書落ちて
雪明りしてこの隈や四季桜
蘆風の己れと折れて枯れ尽きぬ
雲樹寺の蘆の枯れけめ四脚門に
煤じまひ沼夕栄の蔵の戸に