和歌と俳句

河東碧梧桐

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土埋めて汽車道作る冬田かな

浜砂を波の蹴上げや冬田原

不忍や水鳥の夢夜半の三昧

築山や鴨這ひ上る芝の上

かしこまる易者の前に人寒し

万葉の歌に後なき寒さかな

狐吊りて駅亭寒し山十勝

椀程な塚の上にも冬木かな

枯柳枯梅の下に芝の鴨

草枯に染物を干す朝日かな

刺の木のあらはに草の枯れにけり

草枯の長づつみ蜜柑山のあり

月一つあるも怪しき枯木かな

入口や地城の跡の枯銀杏

冬ざれや砂吹きつくる澪柱

砂の中に生海鼠の氷る小ささよ

海鼠あり庖厨は妻の天下かな

千百里漂ひ来る海鼠かな

牡蠣舟を出でて天満の雪景色

酒を置いて老の涙の火桶かな

火燵の間去ることもなく用足りぬ