和歌と俳句

火桶

天下の冬二たび告ぬ桐火桶 言水

霜の後撫子さける火桶哉 芭蕉

あはれなる味あたたまる火桶かな 土芳

一日の炭撫減らす火桶かな 也有

裾に置て心に遠き火桶かな 蕪村

われぬべき年もありしを古火桶 蕪村

桐火桶無絃の琴の撫ごころ 蕪村

琴心もありやと撫る桐火桶 蕪村

われぬべき年もありしを古火桶 蕪村

草の屋の行灯もとぼす火桶哉 太祇

語る夜のつきづきしさよ桐火桶 白雄

火桶はる暦わびしき月日かな 召波

山伏も舞子も住て火桶哉 召波

捨られし火の淵に兀火桶 暁台

火桶抱て艸の戸に入あるじ哉 几董

絵屏風の倒れかかりし火桶かな 子規

文机の向きや火桶の置き処 子規

化物に似てをかしさよ古火桶 子規

いもあらばいも焼かうもの古火桶 子規

五つ紋それはいかめし桐火桶 漱石

僧俗の差し向ひたる火桶哉 漱石

酒を置いて老の涙の火桶かな 碧梧桐

手をかざせば睡魔の襲ふ火桶かな 碧梧桐

尼君の寒がりおはす火桶かな 虚子

牡丹見せて障子しめたる火桶かな 水巴

死病得て爪うつくしき火桶かな 蛇笏

冷ゆる兒に綿をあぶるや桐火桶 蛇笏

こまごまと抽匣もてる火桶かな 青畝

奈良に来て夕間なかりし火桶かな 石鼎

火桶の火吹く顔赤し灯さざる 櫻坡子

勾当のいたはられゐる火桶かな 青畝

二人居ることの嬉しき火桶かな 淡路女

つれづれの手のうつくしき火桶かな 草城

松風にきき耳たつる火桶かな 蛇笏

父酔うてしきりに叩く火桶かな たかし

日光にあす行くといふ火桶だく 立子

鴨下りる水音を聞く火桶かな 青邨

木瓜も咲き春のごとくに火桶かな 青邨

さわやかな耳あぶる朝の火桶かな 水巴

火桶抱き脊ナをかがめて山眺め 立子

わが爪の今宵つやゝか桐火桶 立子

朝の日のあたる火桶に手をかざし 万太郎

われとわが吐息のつらき火桶かな 万太郎

火桶人激するとなく黙しけり 麦南

火桶に手思ひ出せなきことばかり 立子

塗火桶置けば映るや青畳 たかし


短日 冬の日 顔見世 冬の空 初雪 初氷 寒さ 冬木立 枯木 冬枯 枯尾花 冬の山 枯野 みそさざい 都鳥 千鳥 冬の海 河豚 海鼠 冬ごもり 埋火 囲炉裏 焚火 炬燵 暖炉 火鉢 火桶 風邪 日向ぼつこ 北風 霜夜 冬の雨 冬の月 冬至 柚湯 クリスマス 師走 年の市 煤払い